当事務所の現在の弁護活動範囲はこちらでご確認ください。

特定調停|借金トラブル

借金トラブルや特定調停について、この記事では解説しています。特定調停は、債務整理を行う上での一つの選択肢です。メリットとデメリットを理解した上で、活用しましょう。

Q 特定調停とはどのような手続ですか?

特定調停とは、金銭債務の内容等を調整する民事調停のことをいいます。特定調停は、債務者の経済的再生につながることを目的にしています(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律1条、以下「特定調停法」と言います。)。個人、法人にかかわらず、特定調停を利用することができます。

特定調停は、債務者が、借金の返済を楽にして欲しい時に利用する手続になります。特定調停では、債務者は、調停委員に対し、生活、事業の状況等を説明します。他方、債権者も、調停委員に対し、債権回収等に関する考えを伝えます。調停委員は、両者の説明を聞いたうえで、公正かつ妥当な返済計画となるよう両者の話合いを調整していきます。

Q 特定調停のメリットは何でしょうか?

特定調停を利用した場合のメリットですが、次のようになります。

特定調停のメリット
メリット 内容
制限利率への引直し計算 利率が、約定利率(例えば29%)から制限利率(18%等)に変更されます。
利率の変更は、将来の支払い分からではありません。過去の契約当初から、利率が変更されます。
そのため、大幅に負債が減ることがあります。
返済計画の合意が得られやすい 調停委員が、債権者に対して説得を行ないます。また、調停で合意すると、その内容は判決と同じ効力があります。そのため、債権者からの合意も得やすくなります。
強制執行の停止の制度がある 強制執行を止めなければ特定調停が不能となるケース等と認められれば、強制執行の停止が可能となることがあります(特定調停法7条)。

Q 特定調停手続の注意点を教えてください。

特定調停手続の注意点ですが、必ず、成功するとは限らない点です。調停員が説得を試みても、債権者の中には合意できない人もいます。特定調停手続が成功することだけを考えていると、思わぬリスクを背負うことになります。

まず、特定調停手続の申立てを行なうと、期限の利益の喪失となる可能性があります。期限の利益を喪失すると、分割払いであったものが、現時点で一括払いとなります。一括払いができなければ、元金全体に違約金がかかります。違約金は年14%等高利であるため、負担が大きくなります。ケースにより破産手続も視野に入れて、特定調停を行なう必要性があります。

また、住宅ローンの支払いが問題になっている場合、任意売却の機会を失わないようにする必要があります。たとえば、住宅ローンを滞納して自宅が競売手続になったとします。競売手続を止めるため、特定調停の強制執行停止の手段を使うこともない訳ではありません。

しかし、競売を止める強制執行停止は難しいです。競売を止めることだけ考えてしまい、任意売却の機会を失わないように注意する必要があります。競売では安くでしか売却できません。安く売却された場合、住宅ローンの残額は多く残ってしまいます。そのため、できる限り、任意売却で自宅を高く売却する必要性があります。

また、制限利率(18%等)に引直し計算した結果、過払い金が発生することがあります。特定調停手続は、過払い金の回収については範囲外となっています。そこで、過払い金回収のため、別途、弁護士に頼む等の必要性が出てきます。