慰謝料の分割払いについて、この記事では解説しています。慰謝料を分割払いにする理由は様々ですが、方法や形式に注意すべき点があります。
Q 慰謝料について分割払いの合意をするのはなぜですか?
たとえば、刑事事件の被害者との間で示談をして、なんとか検察官に不起訴にしてもらいたいが、すぐにはまとまった金額の慰謝料を準備できないという場合に、被害者との間で慰謝料について分割払いの合意をすることがあります。そうすれば、刑事処分の前に示談を成立させることができ、うまくいけば不起訴になります。
慰謝料を請求する立場である被害者にとっても、資力のない相手から、一部でもいいので確実に慰謝料を回収するためには、分割払いの合意が有効な場合があります。
ただし、次のQ&Aで解説するとおり、分割払いの合意をする場合には、いくつか注意点があります。分割払いにより、確実に慰謝料を回収したいという場合、ぜひ弁護士にご相談ください。
分割払いの合意をする理由 | ・資力のない相手から一部でも慰謝料を回収したい。 ・刑事事件など、短期間に被害者と示談を成立させたいが、手元資金が不足している。 |
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Q 慰謝料の分割払いの合意は、どのような形式と方法で行うべきですか?
この特約を規定しておかなければ、不払いになったのでいざ強制的に回収しようとしても、期限が過ぎた部分の一部の金額しか回収できないことになってしまいます。
なお、毎月の分割金が10万円である場合に、9万9000円の支払いを受けた場合でも、分割金の支払いを怠った場合に当たります。そのため、たとえば、「不払いの金額が●円に達した場合には期限の利益を失う」などとして、金額により期限の利益が喪失する場面を限定する合意がされることもあります。
慰謝料の分割払いの合意の形式は、通常の示談書の形式にする場合と、公正証書の形式にする場合があります。各方法の特徴は、以下の表にまとめた通りです。
通常の示談書 | 公正証書 |
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●書面に双方の署名押印さえあれば良く、手続が簡単で迅速に作成できる。 ●費用がかからない(弁護士に作成や交渉を依頼する場合は弁護士費用がかかります。)。 ●強制執行するためには、別途裁判を起こす必要がある。 |
●公証人役場において、公証人が作成するため、手続きが比較的厳格で一定の手間がかかる。 ●作成にあたって手数料が必要となる。 ●執行受諾文言を入れれば、裁判を経ずに強制執行が可能となる。 |
公正証書の作成の際にかかる手数料は、よほど高額な慰謝料でない限り、5000円から2万円の範囲内で設定されていますので、大きなデメリットとまではいえません。
慰謝料を請求する立場であれば、相手の協力が得られれば、公正証書を作成しておいたほうが安心です。というのも、公正証書に執行受諾文言(「ただちに強制執行に服する」という一文)を入れれば、裁判を経ずに強制執行が可能なため、分割払いの合意で重要となる、心理的プレッシャーを相手に与えることができるからです。
慰謝料の分割払いをご希望の際は、事案に応じた適切な方法と形式をとる必要がありますので、お気軽に弁護士にご相談ください。
Q 資力のない相手以外との間でも、慰謝料を分割払いにするメリットはありますか?
たとえば、妻が他の男性と不倫していた場合に、夫が不倫相手に対し、慰謝料を請求するという事案を想定します。普通に裁判を起こしても、150万円~200万円程度しか慰謝料は認められません。
その不倫相手が、妻子を持っており、大手企業に勤めており、高収入を得ているにもかかわらず、家庭を崩壊させられた慰謝料が200万円というのは少なすぎると感じませんか?
もし、その不倫相手に対して裁判を起こせば、自宅に訴状が不倫の証拠とともに届き、不倫相手の家庭も崩壊してしまいますので、不倫相手としては、絶対に裁判を起こしてほしくないはずです。
そこで、弁護士が代理人として、不倫相手との間で協議し、裁判を起こさないようにする代わりに、たとえば800万円の慰謝料を支払うよう合意できる場合があります。つまり、裁判基準の何倍もの慰謝料の支払いを受けられる場合があるのです。
不倫相手は、いくら収入が高くても、800万円を一括で支払うことは難しい場合が多いため、ここで登場するのが、分割払いの合意です。
当事務所には、慰謝料についての示談の経験が豊富な弁護士が多く所属しています。慰謝料の示談をご希望の方は、当事務所まで、ぜひご相談ください。