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過労死・入院|労働トラブル

過労死・入院の労働トラブルについて、この記事では解説しています。過労により死亡・入院した場合の労災、損害賠償請求の考え方の基本を理解しましょう。

Q 夫が過労による脳出血で死亡しました。遺族はどのような補償を受けられますか?

旦那様が亡くなられて、辛い日々をお過ごしのことと思います。残されたご家族が今後生活していくためにも、適切な補償を受けられるような方策をとることが重要です。

過労により持病が悪化し、死亡に至った可能性が高い場合にまず考えることは、労基署で労災認定を受けることです。労災認定を受けられれば、労災保険から各種給付が受けられるとともに、会社に対し、慰謝料や逸失利益の請求も可能になります。

過労による脳疾患と心疾患について、厚生労働省の通達が詳細な認定基準を定めています。この認定基準は、一般の方にはなかなか正確な理解が難しいため、大まかな考え方をご説明します。

労災認定を得るためには、病気を発症する以前6か月間の残業時間を把握することが極めて重要です。

以下の表にある残業時間を証明できる場合には、原則として、労災認定がされます。

発症前1か月間の残業時間 100時間
発症前2か月間ないし6か月間の残業時間 約80時間超

しかし、いわゆるブラック企業は、勤怠管理が不十分な場合が多く、さらに、タイムカードなどの資料を隠すなど、労基署に対し、残業時間を少なく申告するおそれがあります。このような不誠実な態度により望んだ結果にならなければ、ご遺族が苦しむことになります。

あらかじめ、弁護士にご相談いただければ、労災申請の段階から、対応策を細かくアドバイスし、申請手続を代理させていただきます。結果としてうまく労災認定を受けられれば、労災保険金を受給できるとともに、会社に対して慰謝料や逸失利益を請求できます。

Q 息子が、過労によるうつ病で入院し、働けなくなりました。補償を受けられるのでしょうか。

過労により、うつ病や統合失調症などの精神疾患になった場合、一定の条件のもと、労災認定を受けることができます。

精神疾患による労災の認定基準は、発症前6か月間に起きた出来事を細かく分類し、その種類に応じて心理的負荷の程度を定めています。

たとえば、以下の表にあるような出来事が挙げられています。

心理的負荷の程度 出来事
●経営に影響する重大なミスをし、事後対応まで担当した
●人間性を否定するようなひどい嫌がらせを受けた
●理由なく執拗に退職を強要された
●月160時間超の残業をした
●達成困難なノルマが課された
●取引先からクレームを受けた
●転勤を命じられた
●同僚や部下とトラブルがあった
●公式の場で発表させられた
●勤務形態に変化があった

ここでも極めて重要になるのが、発症前の残業時間です。残業時間が月100時間程度あれば、個別の出来事の心理的負荷が「中」または「弱」であっても、総合評価として「強」とされ、労災認定を受けられる可能性が高まるのです。

具体的には、以下の表の1番から4番の場合には、原則として、労災認定されます。たとえば、4番の行では、具体的な出来事の心理的負荷が「弱」であっても、出来事の前と出来事の後に、それぞれ100時間の残業があれば、労災認定されます。
なお、表にある「残業月100時間」は、その期間中に1回でもあれば足ります。

出来事の前 出来事の心理的負荷 出来事の後
残業月100時間
残業月100時間 出来事から10日以内の発症
残業月100時間 残業月100時間

精神疾患の労災申請は、出来事の洗い出し・評価の作業と、その前後の残業時間を総合評価するという専門的な分析が必要となります。

弁護士にご相談いただければ、ご本人やご家族へのヒアリングにより出来事を洗い出すとともに、各資料を取り寄せて残業時間を把握する作業を行い、労災申請の代理を行います。

結果としてうまく労災認定を受けられれば、労災保険金を受給できるとともに、会社に対して入院期間中の休業損害や慰謝料を請求できます。

Q 労災認定されない場合でも、会社から賠償金を受領することはできるのでしょうか。

労災認定は、認定基準に従って、残業時間を重要な指標として、ある程度画一的に行われます。

一方、裁判によれば、残業時間が基準を満たさず労災認定がされなかった事案でも、それ以外に心理的負荷の大きい出来事を詳細に主張し、立証することで、会社側の過失を認めてくれる場合があります。

労災認定がされなかったからといって、諦めるのはまだ早いです。弁護士にご依頼いただければ、個別の事案の特質をヒアリング等で確認し、適切に証拠を収集するなどして、会社側の過失が裁判で認められるよう全力を尽くします。

その結果、労災保険金を受領できなくても、会社から実質的に損害を賠償してもらえることもあります。