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異動と降格|労働トラブル

異動と降格の労働トラブルについて、この記事では解説しています。社内における異動や降格にはどのような法的ルールがあるのでしょうか。正確な理解が、あなたを労働トラブルから救います。

Q 突然の遠方への転勤辞令。介護が必要な両親と同居しており、悩んでいます。

就業規則に、会社が「業務上の都合により従業員に配転を命じることができる」との定めがあれば、会社は転勤を命じることができます。そして、現実的には、就業規則にそのように書かれていることが多いです。

では、いつ、いかなる場合も、転勤に応じなければならないのでしょうか?

まず、東京でしか勤務しないという約束をして入社したにも拘らず、東京以外での勤務を命じられた場合には、転勤命令は無効になります。

また、以下の場合には、転勤命令が権利の濫用として無効になります。

無効事由
転勤命令 ①業務上の必要性がない場合
②他の不当な動機、目的をもってなされた場合
③労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合

育児介護休業法」という法律では、会社に対し、従業員の家族の介護やこどもの養育について配慮するよう義務づけています。

もし、急な遠方への転勤により、家族の介護や、お子さんの養育が難しくなるようなことがあれば、状況によっては、転勤命令を拒否できる場合もあります。

もし、転勤にどうしても納得いかないと感じたら、一度弁護士に相談してみてください。

Q 降格により給料が減りました。争うことはできないのでしょうか?

「降格」と一言でいっても、課長が一般職に下がるような役職の降格と、資格の降格とで、取り扱いが変わります。

資格と役職との関係は、たとえば、以下のように対応しています。

資格 役職
経営職 1級
2級
3級
店長
上級管理職 1級
2級
3級
店次長
部長
中級管理職 1級
2級
3級
課長
監督職 1級
2級
3級
係長
リーダー職 1級
2級
3級
一般職
ジュニア職 1級
2級
3級
一般係員
(出典:菅野和夫・新・雇用社会の法153頁)

役職のみの降格の場合、役職手当てが減額され、またはなくなりますが、基本給は減額されません。

そして、どのようなポストに人事配置するかについては、経営上の裁量が大きいと考えられています。そのため、人事権の濫用でない限りは、役職の降格は有効であると考えられています。

一方、資格の降格の場合、基本給やボーナスが減額されます。

資格の降格の場合、就業規則等に、いったん達成された資格の引き下げがあり得ることが明記されていない限り、降格は無効となります。(職務等級制度など、成果主義の賃金制度が導入されている企業では、この限りではありません。)

また、そのような規程があったとしても、不合理な評価のもとで、大きく基本給が減少するような資格の引き下げは、人事権の濫用として無効になる場合があります。

役職の降格 ●役職手当の減額・廃止あり
●基本給の減額なし
●会社の裁量が広く、原則として有効(人事権の濫用があれば無効)
資格の降格 ●基本給・ボーナスの減額あり
就業規則等に根拠規定がなければ無効
●根拠規定があっても、人事権の濫用があれば無効

基本給やボーナスの減額を伴う降格を受けた場合には、会社の就業規則の写しを入手した上で、一度、降格トラブルに強い弁護士にご相談ください。

Q 会社から退職勧奨を受け、何度も拒否していると、遠方へ転勤させられ、降格されました。

ご相談をみる限り、会社側が退職勧奨に応じさせるために転勤・降格させたか、拒否したことへの報復としての措置ではないかと考えられます。

一般論としては、転勤、降格のいずれも、正当な人事上の必要性があれば、経営上の裁量の範囲とみなされる場合が多いです。

しかし、今回のように、退職勧奨の目的を実現するという背後に隠れた不当な動機がある場合は、転勤・降格ともに、人事権の濫用として無効になる可能性が高いといえます。

そのような会社の措置に対し、泣き寝入りする必要はありません。早めに、労働トラブルに強い弁護士にご相談ください。

当事務所では、異動・降格のトラブルを含め、労働トラブル全般に強い弁護士が、あなたをサポートさせていただきます。