マルチ商法の消費者トラブルについて、この記事では解説しています。マルチ商法は、身近な知人から勧誘を受けることが多いようです。早期に弁護士に相談しましょう。
Q マルチ商法とは、どのような取引のことをいうのですか?
マルチ商法は、ネットワークビジネスまたはコミュニケーションビジネスなどと呼ばれることもあります。なお、マルチ商法の中には、必ずしもピラミッド状の組織を形成せず、消耗品の反復売買と会員の紹介による利益提供を組み合わせた仕組みもあります。
日本で1960年代以降に社会問題化したねずみ講(無限連鎖講)は、お金を払う参加者が無限に増加していくことを前提として、先に加入した会員が2倍以上の倍率でお金を受け取れる仕組みをいいます。商品やサービスの販売を前提としない点で、マルチ商法と異なります。
ねずみ講は、日本の人口が有限であるにもかかわらず、無限に会員が増えていくことを前提とする仕組みであることから、破綻することが確実であるため、法律で全面的に禁止されています。
一方、マルチ商法は、法律上の連鎖販売取引に該当すれば、厳格な法規制が課されることになります。現在では、法改正などによって、マルチ商法的な取引方法で、連鎖販売取引に該当しないものは、ほとんどなくなってきています。
ただし、実際には、様々な名称や手口でマルチ商法の勧誘を行っており、一般人にはそもそもマルチ商法なのかどうか見分けにくい状況にあります。怪しいビジネスに誘われた、会員として加入してしまったという場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
ねずみ講 | マルチ商法 |
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全面的に禁止 | 「連鎖販売取引」に当たれば厳格な法規制が課される。 |
Q 友人に誘われて会員制ビジネスに参加してしまいました。退会するにはどうすればよいですか?
連鎖販売取引に当たるかどうかは、そのビジネスが、①特定の商品やサービスの販売事業を行っているか、②勧誘にあたって特定の利益がもらえるという内容が説明されたか、③会員になるにあたって特定の負担を伴うかの3点により判断されます。
たとえば、会員に健康食品の販売活動を行わせる事業において(要件①)、会員が入会時に高額な健康食品を購入する代わりに(要件③)、他の会員を紹介すれば一定額の返金が受けられる(要件②)というビジネスは、連鎖販売取引に該当します。
連鎖販売取引に当たるマルチ商法の勧誘を受け、会員として加入してしまった場合でも、法定書面の受領から20日以内であれば、クーリングオフ制度により、特別な理由なく会員契約を解除することができます。
また、勧誘の際に、不実の告知を受け、または不利な事実が故意に告知されなかった場合には、会員契約を取り消すことができます。
クーリングオフ期間の経過後であっても、店舗を持たない個人会員については、特別な理由がなくても、将来に向かって会員契約を中途解約できます。
以上のように、様々な権利を行使できますが、マルチ商法は、親族や友人の勧誘を受けて加入するため、実際には退会が難しいこともあるようです。
マルチ商法にひっかかってしまったとお困りの際には、ぜひ弁護士までご相談ください。権利行使の方法から、実際にうまく退会する方法まで、親身になってアドバイスさせていただきます。
Q マルチ商法で会員になり、新規会員の勧誘活動を行っています。注意すべき点はありますか?
マルチ商法に課される法規制の一覧は以下のとおりです。
行為規制 | |
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1 | 氏名などの明示義務 |
2 | 不実告知・事実不告知の禁止 |
3 | 威迫困惑勧誘の禁止 |
4 | 公衆の出入りする場所以外での勧誘行為の禁止 |
5 | 法定事項の広告表示義務 |
6 | 誇大広告の禁止 |
7 | 未承諾者への電子メール広告の禁止 |
8 | 法定書面の交付義務 |
マルチ商法に参加してしまった個人の方が、上記の行為規制を全て遵守しながら会員の勧誘活動を行うことは、極めて困難といえます。
規制に違反した場合は、行政処分や刑事罰の対象にもなりますし、勧誘行為により新たな会員を増やすと、さらに消費者被害を増加させることになります。
マルチ商法に加入してしまった場合には、早期に退会のための手続きをとるようにしてください。そして、退会にあたっては、弁護士に相談した上で、対応するようにしましょう。